世の中にトコジラミ被害が蔓延してくるにつれ、一般の方々へのトコジラミの知名度も上がってきています。
TVなどのメディアが取り上げた影響もあるのでしょう。
「スーパートコジラミ」などは、恐らくメディアが作り上げた呼び名だと思われます。
ネット上でも本当に沢山のトコジラミ情報が見つかります。
正しいことが書いてある情報ももちろんたくさんあるのですが、どうとでも取れるものや疑わしいものも多くあり…。
一般の方にはどれを信じてよいか非常に難しいと思います。
今回は、トコジラミの「移動」について書いてみます。
トコジラミは歩行移動のみ
トコジラミはカメムシの仲間の昆虫ですが、飛翔のためのはねは完全に退化しています。
なので、通常のカメムシは飛べますが、トコジラミが飛ぶことはありません。
トコジラミの、自力での移動手段は「歩行」のみです。
生きたトコジラミをご覧になったことのある方はご存知だと思いますが、トコジラミはそれほど高速で動き回るわけではありません。
勿論それなりの速度では動きますが、発見したときに「叩けない」「捕獲できない」ほどに動き回るわけではないのです。
移動の範囲も「吸血する」「身を隠す」という行動にほぼ限定されます。
決して賢い生き物ではないので、食事(吸血)に便利な場所に隠れているだけです。
しかし、トコジラミが上記の範囲を超えた移動をするケースがあります。
トコジラミが自力で移動できる範囲を超えた移動をする場合、それは「人間が運んで」しまったケースがほとんどです。
海外から日本へこんにちは!
トコジラミは、遠い外国から人間の荷物や衣類に付着し、日本にやってきます。
宿泊施設から各個人宅への移動するのも、荷物などに付着しているためにできることです。
もちろん、家の中での各部屋間の移動も…。
また、中途半端な薬剤散布等の何かに追い立てられるようなことがあれば、廊下伝いに隣の部屋に歩いて移動してしまう可能性はあります。
しかし、トコジラミの習性として別の場所にどんどん移動していくような状況は、弊社では確認したことがありません。
一戸建ての家の中でも、部屋から部屋への移動は人間が関与していると思われます。
家具や荷物の移動、畳んだ洗濯物をちょっと床に置いたときにトコジラミをつけてしまい、別の部屋へ持っていってしまう、今着ている服に付着させ、別の部屋で落とす…等が原因でしょう。
一戸建てにしても集合住宅にしても、弊社で駆除工事を行う際は、処理(特にMC剤散布※)を行わない場所が無いように心がけています。
※MC剤=マイクロカプセル剤 有効成分を微細なマイクロカプセルに封入した水溶液。残効性が非常に高くトコジラミ駆除に有効
トコジラミは自分では長い距離を歩きませんが、衣類などに付着して人間に運搬してもらうことはできます。
人が頻繁に出入りする場所、若干長居する場所は特に注意が必要でしょう。
だからこそ、トイレにもしっかりMC剤散布をします。
人間が関与しなかった場合、トコジラミが自力でどこまで被害を広げる状況が考えられるでしょうか。
隣の家からこんにちは!はあり得るか?
例えば一戸建てにお住まいのケースを考えてみましょう。
仮に、お隣の家でトコジラミが大量発生していたとします。
これはあくまで弊社の見解ですが、お隣の家の方と互いの家を訪問する機会や、物品の行き来がない限り、お隣の家のトコジラミがご自宅へやってくる事は無いように思います。
逆に言うと、お隣の家と親しい交流がある場合はトコジラミの行き来が発生する可能性があります。
マンションなどの鉄骨造りの集合住宅の場合はどうでしょうか?
以前は「お隣の世帯とはコンクリートの壁で遮断されているため、人為的な移動が行われない限りはトコジラミの移動は起こらない。」と考えていました。
ところが最近になって、コンクリート造の集合住宅で「隣の世帯(または上の世帯)からトコジラミが移動してきてしまった」という案件を2件も経験してしまいました。
2件ともベランダ越しの移動でした。
お隣の世帯に激しいトコジラミ被害があり、トコジラミが大量に付着してしまった家具などをベランダに出しておいたため、トコジラミがベランダ越しに隣へ移動しそれを室内に持ち込んでしまった、というものです。
木造建築の、アパートのような集合住宅の場合はどうでしょう?
これも弊社の案件で3件、隣の世帯へトコジラミが自力で移動していたケースを経験しています。
正確には3件とも上下階への移動でした。
1件は1階から2階へ移動、2件は2階から1階への移動です。
この5件とも、お問い合わせがあった世帯は移動して来れられてしまった世帯で、原因になっていた世帯は諸事情あり被害が放置されていたため凄まじい被害状況になっていた、というものでした。
このような状況はこれまでほとんどなかったものです。
この5件のうちのの4件は直近2年ほどの時期に発生しています。
近年のトコジラミ被害の増加を考えると、このようなケースは表面化していないだけで意外と沢山発生しているのかもしれません。